飼養管理レポート

 
私たち酪農総合研究所は、雪印メグミルクグループの掲げる3つの使命を果たすために、「酪農生産への貢献」の一翼を担う活動に取組んでいます。

特に、酪農産業に関る幅広い分野の科学的・実践的調査研究とその成果の普及を通して、わが国酪農の発展と食糧の安定的需給に寄与してまいります。

2018年4月3日火曜日

母牛と子牛のための分娩管理

雪印メグミルク株式会社酪農総合研究所は2018年2月1日、酪総研シンポジウム「酪農現場の“カイゼン”を考えるⅡー牛づくりにおけるロスとその対策ー」を開催しました。


前回の第一講演要旨に続き、今回は第二講演の要旨を掲載致します。



第二講演

演題 : 母牛と子牛のための分娩管理

演者 : 株式会社 石井獣医サポートサービス

    代表取締役 石井 三都夫 氏





 







 元気で生まれてくるはずの新生子牛の約8%が分娩事故で命をなくしている。今回あえて「…のための」としたのは、分娩管理が管理する人の都合により行われていることを憂慮しているからである。母牛や子牛のための“カイゼン”とは何かを考えながら分娩管理技術を解説する。
実際に近年の乳検データ上では難産は減少し、一方で死産(分娩時の子牛の死亡事故)は年々増加している。これは、酪農場が大型化多頭化する中、農家あるいは従業員が分娩に立ち会う機会が減っていることが背景にある。無監視のまま分娩が進行しない(広い意味の難産である)で生じる死産や、せっかく娩出されても、分娩牛舎の構造や混雑などの劣悪な環境から生じる新生子死が後を絶たない。また、一方では、難産や死産への警戒や牛舎における作業上の都合による早すぎるタイミングの助産は、かえって難産や死産の増加につながっている。
今回は、ヒトのお産とウシのお産の違いについて考えながら、ウシにはどのような分娩管理上の問題があるのか?分娩事故率の低減のためにはどのような管理が求められるのかを考えてみよう。新生子牛とヒトの新生児との大きな違いは母から子への受動免疫の移行に関する機構の違いであろう。ヒトは生まれながらにして血液を介してすでに免疫が移行している。ウシは生まれた時点では免疫の移行は行われておらず、元気に立ち上がって、初乳を自ら吸引することで初めて免疫が移行する。すなわち、生まれた子牛は元気でなければならない。もう一つ重要なことは、免疫学的に無防備で生まれた子牛たちや母牛の子宮感染症を予防する上で、分娩房は可能な限り清潔でなければならない。自然分娩で生まれた子牛は元気であり病気をせずにすくすくと育つ。分娩管理上の基本は自然分娩を見守ることである。自然分娩で生ませるためには、寝起きしやすく、清潔で、広く、単独になれる分娩環境を提供することが必要である。やむを得ず劣悪な環境で分娩させる場合には、しっかりと分娩観察を行い、適切なタイミング(足を出してから初産牛2時間、経産牛1時間)で、介助の影響を最小限にしながら助産することを心掛けたい。
すべてのウシとヒトが幸せになれますように…

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